中小企業の事業再生等に関するガイドラインとは?再生型と廃業型の2つの私的整理と、令和8年4月1日から適用の改定版

中小企業の事業再生等のための私的整理手続から再生型と廃業型の2つに枝分かれする図のアイキャッチ画像
結論から

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」が公表したもので、2022年3月4日から適用されています。法律ではなく、中小企業者と金融機関が共通の認識を持つための取りまとめです。

中身は大きく2つあります。ひとつは平時・有事の各段階で中小企業者と金融機関がそれぞれ果たすべき役割の明確化。もうひとつが、新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」です。

この私的整理手続は再生型と廃業型の2つに分かれます。どちらも、中立の立場で選ばれる第三者支援専門家(弁護士・公認会計士等)が関与します。

ガイドラインとQ&Aは令和8年3月16日に一部改定され、令和8年4月1日から適用されています。適用開始日前でも、債務者である中小企業者と全対象債権者の合意があれば改定版を使えると金融庁が案内しています。

何のためのガイドラインか

資金繰りが厳しくなったとき、会社が取れる道は「裁判所を使う法的整理」だけではありません。債権者と話し合って進める私的整理があります。ただし私的整理は手続きの型が決まっていないと進めづらく、金融機関も判断に困ります。そこを埋めるために作られたのがこのガイドラインです。

全国銀行協会の「中小企業事業再生等ガイドライン」のページ。ガイドライン本文619KB、Q&A 886KB、令和8年3月改定版の新旧対照表943KBなどのPDFが並んでいる画面
出典:一般社団法人全国銀行協会「中小企業事業再生等ガイドライン」

経済産業省北海道経済産業局の解説は、ガイドラインの性格をこう整理しています。中小企業者の「平時」や「有事」の各段階で、中小企業者・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確にし、事業再生等に関する基本的な考え方を示すとともに、より迅速に事業再生等へ取り組めるよう新たな準則型私的整理手続を定めた、というものです。

ガイドラインの位置づけ
項目 内容
作ったのは誰か 一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」(座長:小林信明 弁護士)
適用開始 2022年(令和4年)3月4日
法的な性格 法律ではない。取組みの方向性を取りまとめたもの
主な中身 平時・有事の役割の明確化/基本的な考え方/新たな準則型私的整理手続
最新の改定 令和8年3月16日に一部改定、令和8年4月1日から適用
関係する公的機関 金融庁(活用を促進)、中小機構(第三者支援専門家の候補者リストを公表)

私的整理手続は再生型と廃業型の2つ

ガイドラインが定める私的整理手続は2種類です。会社をたたむための手続きまで同じガイドラインに入っているのが特徴で、ここが借り手にとっては重要な点になります。

2つの手続きの違い

再生型私的整理手続

事業の継続を前提に進める手続きです。再生計画案を作り、第三者支援専門家がその内容を調査します。

廃業型私的整理手続

再生型を検討する過程で、第三者支援専門家や主要債権者が事業の継続可能性が見込まれないと判断し、かつ中小企業者からも廃業の申出があった場合に、廃業型の適用も含めて対応するとされています。

どちらにも共通すること

中立の立場の第三者支援専門家が関与します。裁判所の手続きではなく、対象債権者との合意で進めます。

「再生を目指して話し合ったが継続が見込めなかった」というときに、同じ枠組みの中で廃業型へ移る道が用意されている、という設計です。借りている側から見れば、相談を始める時点で結論を決めておく必要がない、ということになります。

第三者支援専門家とは誰か

この手続きの中心にいるのが第三者支援専門家です。弁護士や公認会計士等の専門家で、再生型私的整理手続および廃業型私的整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得た人を指します。

中小機構の「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」のページ。ガイドラインの公表、第三者支援専門家候補者の公表、候補者の登録申請、就任等に関する報告、問い合わせの項目が並んでいる画面
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」
第三者支援専門家の候補者リスト(中小機構が公表)
リストの区分 金融支援の区分
弁護士 債務減免等および債務返済猶予
公認会計士 債務減免等および債務返済猶予
(区分を限定したリスト) 債務返済猶予

金融支援の区分が「債務減免等および債務返済猶予」と「債務返済猶予」に分かれている点に注意が要ります。借金を減らしてもらう話まで扱えるかどうかで、選べる専門家が変わります。中小機構は、中小企業庁の要請により、ガイドラインが示す選定基準に従った候補者リストを公表しています(全国本部関係分)。

候補者リストに載るための認定要件のひとつが「調査報告書の作成経験」です。中小機構は、弁護士については再生計画案にかかる調査報告書の作成経験、公認会計士等についてはデューデリジェンスの検証にかかる調査報告書の作成経験を意味すると説明しています。

令和8年4月1日から改定版が適用されている

ガイドラインは動いています。直近の改定は令和8年3月16日に公表され、令和8年4月1日から適用されています。

金融庁の報道発表資料「中小企業の事業再生等に関するガイドライン及びQ&Aの一部改定について」(令和8年3月16日)。改定の目的と、令和8年4月1日から適用されること、適用開始日前でも関係者の合意があれば利用できることが書かれている画面
出典:金融庁「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』及びQ&Aの一部改定について」(令和8年3月16日)

金融庁の発表は、今回の一部改定の目的を次のように説明しています。

令和8年3月改定でねらったこと

早期の事業再生

地域経済の維持・成長に向けた早期事業再生と、その手段としての事業承継・M&Aの重要性を示す。

平時からの対話

有事の対応を迅速・円滑にするため、平時からの中小企業者と金融機関の間のコミュニケーションの重要性を示す。

実務の明確化

活用実績を踏まえた実務上の取扱いの明確化等を行い、ガイドラインの実効性を一層強化する。

公表からの経緯

  1. 令和4年3月4日

    ガイドラインが公表され、同日から適用開始。

  2. 令和4年4月1日

    Q&Aが公表される。同年4月11日にQ&Aが改訂。

  3. 令和5年10月17日

    金融庁が「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」を公表。

  4. 令和6年1月17日

    ガイドラインおよびQ&Aが改定される。

  5. 令和8年3月16日

    ガイドラインおよびQ&Aを一部改定。全国銀行協会のホームページで公表。

  6. 令和8年4月1日

    改定版の適用開始。適用開始日前でも、中小企業者と全対象債権者の合意があれば改定版を利用できる。

金融庁は活用実績も公表しています。直近は令和8年7月17日公表で、官民金融機関における2025年4月から2026年3月末までの実績を取りまとめたものです。手続きの相談先や進め方は改定のたびに変わり得るため、実際に使うときは全国銀行協会が公表している最新版のガイドラインとQ&Aを確認してください。

どこへ相談するか

資料の入手先と相談先は分かれています。役割を押さえておくと迷いません。

関係する組織の役割
組織 役割
全国銀行協会 研究会の事務局。ガイドライン本文・Q&A・新旧対照表・参考書式を公表。ガイドラインの内容に関する照会窓口
金融庁 金融機関による活用を促進。改定の公表、事例集の公表、活用実績の公表
中小機構(中小企業活性化全国本部) 第三者支援専門家の候補者リストの公表、登録申請の受付、就任等の報告の受付
中小企業活性化協議会 各都道府県に置かれた相談の入口。ガイドラインとは別に、協議会自身の支援メニューもある

経営者保証を外したい、という論点はこのガイドラインだけでは完結しません。別途「経営者保証に関するガイドライン」があります。詳しくは経営者保証を外す3要件とは?を参照してください。相談の入口については中小企業活性化協議会とは?にまとめています。

よくある質問

これは法律ですか。
法律ではありません。全国銀行協会を事務局とする研究会が、事業再生等に関する取組みの方向性を取りまとめたものです。そのうえで、金融庁が金融機関による積極的な活用を促しています。
いつから使えますか。
2022年3月4日から適用されています。直近では令和8年3月16日に一部改定され、改定版は令和8年4月1日から適用されています。
改定版が適用される前の案件はどうなりますか。
金融庁は、適用開始日前であっても、個別事案における関係者(債務者である中小企業者および全対象債権者)の合意があれば、改定版のガイドラインおよびQ&Aを利用できると案内しています。
廃業する場合も使えますか。
使えます。ガイドラインは廃業型私的整理手続を定めています。再生型を検討する過程で、第三者支援専門家や主要債権者が事業の継続可能性が見込まれないと判断し、かつ中小企業者からも廃業の申出があった場合に、廃業型の適用も含めて対応するとされています。
第三者支援専門家は自分で探すのですか。
中小機構(中小企業活性化全国本部)が、中小企業庁の要請によりガイドラインの選定基準に従った候補者リストを公表しています。リストは弁護士、公認会計士、そして金融支援の区分が債務返済猶予のものに分かれています。
ガイドラインの本文はどこで読めますか。
全国銀行協会のウェブサイトで、ガイドライン本文、Q&A、新旧対照表、手続利用に当たっての参考書式が公開されています。金融庁のウェブサイトからも、改定の公表資料や事例集をたどれます。

出典

  • 一般社団法人全国銀行協会「中小企業事業再生等ガイドライン」https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/sme-guideline/(ガイドラインの趣旨、本文・Q&A・令和8年3月改定版の新旧対照表・参考書式・第三者支援専門家に関する情報掲載先一覧の公開、内容に関する照会の扱い)
  • 金融庁「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』及びQ&Aの一部改定について」(令和8年3月16日)https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20260316/20260316.html(研究会の座長、一部改定の目的、令和8年4月1日から適用、適用開始日前でも関係者の合意があれば利用できること)
  • 金融庁「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』について」https://www.fsa.go.jp/policy/jigyousaisei/index.html(令和4年3月4日の公表、令和4年4月1日のQ&A公表と4月11日の改訂、令和6年1月17日の改定、令和5年10月17日の事例集公表、活用実績の公表)
  • 金融庁「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』の活用実績について」(令和8年7月17日)https://www.fsa.go.jp/news/r8/ginkou/20260717-2/20260717-2.html(官民金融機関における2025年4月〜2026年3月末までの活用実績の取りまとめ)
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」https://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/smegl/index.html(中小企業庁の要請による候補者リストの公表、弁護士・公認会計士・債務返済猶予の区分、認定要件としての調査報告書の作成経験、就任時および関与案件終了時の報告)
  • 経済産業省北海道経済産業局「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」https://www.hkd.meti.go.jp/information/chusho/saisei2.htm(2022年3月4日からの適用開始、平時・有事の役割の明確化、新たな準則型私的整理手続としての位置づけ)

内容は2026年9月27日に各公表資料で確認したものです。ガイドラインとQ&Aは改定されます。個別の案件については、全国銀行協会が公表している最新版と、弁護士・公認会計士等の専門家、および中小企業活性化協議会にご確認ください。

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