経営者保証を外す3要件とは?ガイドラインの位置づけと、履行後に残る99万円+100万〜360万円を公表資料で確認

経営者保証を外す3要件と書いたアイキャッチ。区分・分離、財務基盤、情報開示の3枚のカードと、履行後も残る自由財産99万円+αのバッジを配置している

融資の話が進んだ最後に、代表者個人が連帯保証人として署名を求められる。この「経営者保証」があるために、思い切った投資に踏み切れない、あるいは後継者が事業承継を断る。こうした声を受けて、全国銀行協会と日本商工会議所が2013年に「経営者保証に関するガイドライン」をまとめました。法的な拘束力はありませんが、外せる条件と、外せなかった場合に手元へ残せるものが具体的に示されています。数字まで踏み込んで確認します。

この記事でわかること

  • ガイドラインは2013年12月5日公表、2014年2月1日適用開始。中小企業庁は「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置づけています。
  • 保証を外せるかは3要件で判断されます。法人と経営者の区分・分離、財務基盤の強化、財務情報の適時適切な開示です。
  • 要件を満たしても最終的な判断は金融機関に委ねられます。満たせば必ず外れる仕組みではありません。
  • 保証を履行することになった場合でも、破産時の自由財産99万円に加えて約100万円〜360万円の生活費を残す検討、「華美でない自宅」に住み続けられるような検討が求められます。
  • 日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」は、公式ページに上乗せ利率はありませんと明記されています。

経営者保証とは何を負う約束か

中小企業庁の定義では、経営者保証とは「中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)」です。企業が倒産して返済できなくなった場合、経営者個人が企業に代わって返済を求められます。会社の借入でありながら、失敗したときの負担が個人へ移る仕組みです。

この仕組みには、経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与する面があると中小企業庁も認めています。一方で、経営者による思い切った事業展開、早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因になっているという指摘もある。ガイドラインは、その両面を踏まえた解決策の方向性をまとめたものです。

全国銀行協会の経営者保証ガイドラインのページの画面キャプチャ。ガイドライン本文、事業承継時の特則、廃業時の基本的考え方、Q&Aなどの資料が並んでいる
出典:一般社団法人 全国銀行協会「経営者保証ガイドライン」(2026年9月15日に確認)。
項目 内容
策定者 全国銀行協会と日本商工会議所(経営者保証に関するガイドライン研究会)
公表 平成25年(2013年)12月5日
適用開始 平成26年(2014年)2月1日
位置づけ 中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール。法的な拘束力はないが、関係者が自発的に尊重し遵守することが期待されている
最終判断 経営者保証を解除するかどうかは金融機関に委ねられる
関連する文書 ガイドライン本文のほか、事業承継時に焦点を当てた特則、廃業時における基本的考え方、Q&A、課税関係の整理に関するQ&Aなどが公表されている

外せるかどうかを決める3要件

中小企業庁が示すガイドラインの3要件は次のとおりです。内部または外部からのガバナンス強化により、これらを将来にわたって充足する体制が整備されていることが必要とされています。

要件 内容 実務で問われること
法人と経営者の関係の区分・分離 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている 役員貸付金・役員借入金の有無、経営者名義の不動産を会社が使っている場合の賃貸借契約、経費の私的利用
財務基盤の強化 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である 債務超過でないか、営業利益で返済原資を確保できているか
財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている 決算書の提出だけでなく、月次試算表や資金繰り表を求めに応じて出せるか

3要件の全部または一部を満たすと、事業者側は「経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある」「すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性がある」とされています。金融機関側は、充足度合いに応じて経営者保証を求めないことや、保証機能の代替手法を検討することが期待されます。

代替手法として挙げられているのが停止条件付保証契約です。中小企業庁の説明では、中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)に違反しない限り、保証債務の効力が発生しない契約とされています。保証を完全になくすか残すかの二択ではなく、その中間があるということです。

満たしても「必ず外れる」わけではない

ここが最も誤解されるところです。中小企業庁は明確に、経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は金融機関に委ねられると書いています。3要件は判断材料であって、達成すれば自動的に保証が外れるチェックリストではありません。

「ガイドラインがあるから外せるはずだ」という交渉は成立しません。法的拘束力のない自主的なルールであることは、中小企業庁自身が明記しています。実務では、3要件のどこが足りないのかを金融機関から具体的に聞き出し、次の決算までにどこを埋めるかを決めるほうが前に進みます。

相談先も整理されています。経営者保証全般は取引金融機関、商工会議所・商工会、中小企業団体中央会。ガバナンス体制の整備を含めた収益力改善は中小企業活性化協議会や認定経営革新等支援機関。保証債務整理は中小企業活性化協議会です。信用保証協会の保証付き融資とは別の枠組みなので、どちらの話をしているのかを混同しないでください。

公庫には保証を外す専用の制度がある

民間金融機関との交渉とは別に、日本政策金融公庫(国民生活事業)には「経営者保証免除特例制度」という制度が用意されています。ガイドラインに対応した制度で、7つの類型のいずれかに当てはまり、経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人が対象です。

日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度のページの画面キャプチャ。利用できる方の7つの要件と、利率に上乗せがない旨が表示されている
出典:日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」(2026年9月15日に確認)。
類型 要件の概要
1 税務申告を2期以上実施していて、法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていることを公庫が確認でき、かつ最近2期の減価償却前経常利益が2期連続で赤字でないこと、または直近期が債務超過でないこと
2 新たに事業を始める方、または税務申告を2期終えていない方で、一体性の解消の要件を満たすこと
3 物的担保の提供がある方で、一体性の解消の要件を満たすこと
4 新規開業後おおむね5年以内で技術・ノウハウ等に新規性がみられる方等で、一体性の解消の要件を満たすこと
5 取引金融機関で代表者保証の免除に関する協調対応が見込める方、または取引金融機関から代表者保証を免除された借入の残高がある方
6 事業承継・集約・活性化支援資金、または生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金を利用する方
7 ソーシャルビジネス支援資金を利用するNPO法人

公式ページの利率の欄には「各種融資制度に定める利率(上乗せ利率はありません。)」と書かれています。保証を外す代わりに金利が上がる、という説明を見かけることがありますが、現在の公庫の案内にその記載はありません。なお「一体性の解消」については注記があり、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないことと定義されています。役員貸付金が残っている決算書は、この一点でつまずきます。

役員貸付金を消す

公庫の注記が名指ししているのはここです。返済するか、役員報酬の調整で解消するか、決算までに道筋をつけます。

債務超過を解消する

類型1では、2期連続の赤字でないことか、直近期が債務超過でないことのどちらかを満たす必要があります。

開業直後は別の入口がある

税務申告を2期終えていない場合は類型2、新規性のある事業なら類型4という経路が用意されています。

他行の実績を使う

取引金融機関ですでに代表者保証を免除された借入があるなら、類型5に当たります。

保証を履行することになったとき、手元に何が残るか

ガイドラインのもう半分は、返せなくなったあとの話です。中小企業庁の資料には、保証履行後も保証人の手元に残る資産等として次の4点が挙げられています。

項目 内容
自由財産 破産時の自由財産99万円は、原則として経営者の手元に残る
一定期間の生活費 事業再生等の早期着手により法人からの回収見込額が増加した場合、自由財産に加えて一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に、年齢等に応じて約100万円〜360万円)を残すことを金融機関が検討する
華美でない自宅 経営者の収入に見合った分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう金融機関が検討する
残額の免除 保証債務履行時点の資産で返済し切れない保証債務の残額は、原則として免除する

さらに、保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。破産手続によらずにガイドラインで整理した場合、いわゆる事故情報として残らないということです。

この扱いを受けるには「事業再生等の早期着手」が前提に置かれている点を見落とさないでください。手遅れになってから相談しても、法人からの回収見込額は増えません。返済が苦しくなってきた段階での相談が、結果的に手元に残るものを増やします。繰上返済で利息を減らす判断と同じで、動き出す時期が効く領域です。

いま何から手をつけるか

保証を外したい場合の順序は、要件の並びどおりです。まず決算書から役員貸付金を消し、法人と個人のお金の出入りを切り離す。次に、法人単体の収益力で返済できる状態をつくる。最後に、求められたときに月次の数字を出せる体制を整える。3つ目は書類を作るだけなので、いちばん早く着手できます。

そのうえで、取引金融機関に「いまの当社は3要件のどこが足りないか」を具体的に聞きます。事業承継を控えているなら、事業承継時に焦点を当てた特則が別に公表されているので、そちらも合わせて確認してください。廃業を視野に入れている場合も、廃業時における基本的考え方という文書が用意されています。

よくある質問

経営者保証に関するガイドラインには法的な拘束力がありますか

ありません。中小企業庁は「法的な拘束力はないが、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されている」と説明しています。

3要件を満たせば必ず保証が外れますか

外れません。解除するかどうかの最終的な判断は金融機関に委ねられると明記されています。満たせば「外せる可能性がある」という位置づけです。

停止条件付保証契約とは何ですか

中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)に違反しない限り、保証債務の効力が発生しない契約です。保証を求めない扱いの代替手法として挙げられています。

保証を履行すると自宅は必ず手放すことになりますか

ガイドラインでは、「華美でない自宅」について、経営者の収入に見合った分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう金融機関が検討するとされています。必ず残るという保証ではなく、検討の対象になるという枠組みです。

公庫の経営者保証免除特例制度を使うと金利は上がりますか

公式ページには「各種融資制度に定める利率(上乗せ利率はありません。)」と記載されています。

役員貸付金があると保証は外せませんか

公庫の注記では、一体性の解消とは「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと」と定義されています。残っている場合は、まずその解消が課題になります。

事業承継のときはどう扱われますか

事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則が別途公表されています。前経営者と後継者の双方から二重に保証を取ることへの考え方などが示されています。

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