在庫や売掛金を担保に借りるには?動産・債権譲渡登記の登録免許税と存続期間を法務省の資料で確認

在庫や売掛金を担保に借りるときの動産・債権譲渡登記の登録免許税。動産譲渡登記7,500円、債権譲渡登記5,000個超15,000円、抹消登記1,000円を並べた図

担保に出せる不動産がない。それでも会社には在庫があり、取引先に対する売掛金がある。この2つを担保にして借りる方法が、動産・債権を担保とする融資、いわゆるABLです。特別な裏技ではなく、法務省が登記制度を用意している公式の仕組みで、登録免許税の額まで公表されています。制度の骨格と、実際にいくらかかるのかを整理します。

先に要点

  • 動産譲渡登記制度は、法人が持つ在庫商品・機械設備・家畜などの動産を活用するための制度です。
  • 債権譲渡登記制度は、法人がする金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対する対抗要件を簡便に備えるための制度です。
  • 登録免許税は、動産譲渡登記が1件7,500円。債権譲渡登記は債権個数5,000個以下なら7,500円、5,000個超なら15,000円です。
  • 延長登記は1件3,000円、抹消登記・一部抹消登記は1件1,000円です。
  • 存続期間は動産譲渡登記が10年、債権譲渡登記が50年(債務者不特定の債権を含む場合は10年)を超えるとき、特別の事由を証する書面が必要になります。
  • 登記には譲渡人の代表者の印鑑証明書など、作成後3か月以内の書面がいくつも要ります。段取りに時間がかかります。

在庫と売掛金は、登記で担保にできる

不動産を担保にするときは抵当権の登記をします。同じように、動産と債権にも専用の登記制度があります。法務省は債権譲渡登記制度について「法人がする金銭債権の譲渡などについて、債務者以外の第三者に対する対抗要件を簡便に備えるための制度」と説明し、動産譲渡登記制度については「法人が有する動産(在庫商品、機械設備、家畜等)を活用するための制度」としています。

動産譲渡登記の対象である在庫商品・機械設備・家畜と、債権譲渡登記の対象である売掛金・将来債権・質権設定を左右に並べた比較の図
登記の対象は2系統に分かれる。

ポイントは「対抗要件」という言葉です。担保に取った側が、あとから現れた第三者に対して「この在庫は私が担保に取っている」と主張できるようにするのが登記の役割です。逆に言えば、登記をしていない口約束の担保は、他の債権者との争いで負ける可能性があります。貸す側が登記を求めるのはこのためです。

倉庫の在庫と工場の機械、請求書が並び、そこから矢印が銀行の建物へ伸びている説明用のイラスト
説明用イラストです。特定の企業や制度の画面ではありません。

登記にいくらかかるのか

法務省は登記の種類ごとに登録免許税を公表しています。金額は租税特別措置法による軽減後の額を含みます。

動産譲渡登記7,500円、債権譲渡登記5,000個超15,000円、延長登記3,000円、抹消登記1,000円という登録免許税を横棒で比べた図
登記1件あたりの登録免許税。
登記の種類 登録免許税(1件につき) 補足
動産譲渡登記 7,500円 租税特別措置法により軽減された額
債権譲渡登記/質権設定登記(債権個数5,000個以下) 7,500円 租税特別措置法により軽減された額
債権譲渡登記/質権設定登記(債権個数5,000個超) 15,000円 個数で区分が変わる
延長登記 3,000円 存続期間を延ばす登記。租税特別措置法により軽減された額
抹消登記/一部抹消登記 1,000円 返済が終わったら抹消する

納付方法は収入印紙または収納機関等発行の領収証書です。オンライン申請なら歳入金電子納付システムも使えます。税額そのものは、不動産の抵当権設定と比べれば軽い水準です。ただしこれは税額だけの話で、司法書士に依頼する場合の報酬や、添付書面を取り寄せる費用は別に発生します。

登記申請に誤りがあった場合、取下書を添付していないと申請は却下され、提出した書類と貼付した収入印紙は返ってきません。法務省はこの点を明記して注意を促しています。

期間には上限の考え方がある

登記は永久ではありません。存続期間を定め、必要なら延長登記で延ばします。ここに、登記の種類ごとの目安が置かれています。

登記の種類 この期間を超えるとき 必要になるもの
動産譲渡登記 登記の日から10年 その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面
債権譲渡登記/質権設定登記 50年(債務者不特定の債権を含む場合は10年) 同上
延長登記 当初の登記の日から起算して10年 同上。起点は最初の登記の日

見落としやすいのが延長登記の起点です。法務省は「存続期間は、当初の登記の日から起算されます」と注記しています。延長した日からさらに10年ではありません。長期の借入に動産担保を使う場合、この起算点を勘違いすると、想定より早く延長の手続きが必要になります。

添付書面の準備に時間がかかる

費用より実務の負担になるのが書類です。動産譲渡登記の場合、書面申請では次のようなものが必要とされています。

書面 誰のものか 期限
代理権限証書(委任状等) 代理申請の場合のみ 官庁作成のものは作成後3か月以内
代表者の資格証明書(登記事項証明書) 譲渡人 作成後3か月以内
代表者の印鑑証明書 譲渡人 作成後3か月以内。登記所が作成したもの
代表者の資格証明書または住所証明書 譲受人(法人か自然人かで異なる) 作成後3か月以内
特別の事由を証する書面 存続期間が10年を超えるとき

資格証明書は添付を省略できる場合があるとされていますが、3か月以内という期限が付いている書類が複数あるため、取り寄せのタイミングを誤ると出し直しになります。急ぎの資金調達で使うなら、書類の有効期限から逆算して動く必要があります。

同じ日に複数の申請をする場合、添付書面の内容が同一なら1通の原本を添付すれば足りるとされています。ただし他の申請書には、原本の写しに相違ない旨を記載した謄本を添付します。複数の担保を同時に設定するときは、この扱いを前提に部数を数えてください。

抹消を忘れると、次の借入で不利になる

返済が終わっても、登記は自動では消えません。抹消登記を申請してはじめて消えます。ここを放置すると、登記上は「この在庫や売掛金には担保が付いたまま」という状態が続きます。

次に別の金融機関へ申し込んだとき、相手は登記を確認します。すでに完済しているのに担保が残って見えれば、担保余力がないと判断される材料になりかねません。抹消登記の登録免許税は1件1,000円で、費用としては小さい部類です。完済したら速やかに手続きする、と覚えておくほうが安全です。

抹消登記にも添付書面があります。譲渡人の代表者の資格証明書、譲受人の印鑑証明書などで、いずれも作成後3か月以内という期限が付きます。担保を外す側も書類を用意する必要があるため、貸し手との連絡は完済の少し前から始めておくと滞りません。

他の資金調達手段とどう並ぶか

在庫や売掛金を使う手段は、動産・債権担保融資だけではありません。担保に取るのか、売ってしまうのかで性格が変わります。

手段 資産の扱い 返済義務 登記
動産・債権担保融資 担保に差し入れる。引き続き自社のもの ある 動産譲渡登記・債権譲渡登記
ファクタリング 売掛債権を売却する 原則ない(買取の場合) 債権譲渡登記を求められることがある
不動産担保ローン 不動産を担保に差し入れる ある 抵当権設定登記
信用保証付き融資 担保に依存しない設計もある ある 原則不要

ファクタリングとの線引きは特に注意が必要です。買取の形をとりながら実質は貸付けというケースについて、金融庁が特徴を挙げています。詳しくはそのファクタリング、実は貸付けでは?で整理しました。担保に依存しない選択肢を先に検討するなら、信用保証協会の保証付き融資から当たるのが順当です。

なお、2026年5月25日には事業性融資推進法が施行され、企業価値担保権という新しい担保の枠組みが動き始めています。個々の資産ではなく事業全体を担保にする考え方で、動産・債権担保とは設計が違います。内容は企業価値担保権とはにまとめています。

よくある質問

個人事業主でも動産譲渡登記は使えますか

動産譲渡登記制度も債権譲渡登記制度も、対象は法人がする譲渡です。個人事業主の場合は、この登記制度を前提とした担保設定はできません。

登記をすると取引先に知られますか

債権譲渡登記は、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。債務者への対抗要件を備えるかどうかは別の手続きになります。取引先への通知の要否は契約条件次第なので、貸し手に確認してください。

返済が終わったら登記はどうなりますか

自動では消えません。抹消登記を申請します。登録免許税は1件1,000円です。

在庫は担保に入れたまま売ってよいのですか

在庫を流動的に扱う前提の担保もありますが、扱える範囲は契約で決まります。勝手に処分できるかどうかは、貸し手との合意内容によります。

オンラインで申請できますか

できます。オンライン申請の場合、登録免許税は歳入金電子納付システムを利用して納付できると案内されています。

登録免許税以外に何がかかりますか

登記事項証明書や印鑑証明書の取得費用、代理申請を依頼する場合の報酬がかかります。金額は依頼先によって違うため、見積もりで確認してください。

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