今回は、ビジネスローンを利用しようとしている経営者のためにビジネスローンの審査基準について解説します。
ビジネスローンの審査基準
審査基準その1.決算数値
当然ながら、ビジネスローンの審査で重要になるのは「決算数値」です。決算書の数値がビジネスローン審査の8割を占めると言っても過言ではないほど重要な審査基準と言えます。
では、決算書の数値のどこの部分を見ているのでしょうか?
決算数値で重要なポイントは
- 「収益性」
- 「安全性」
- 「返済能力」
の3つのポイントです。
1.「収益性」を判断する決算数値
経常利益率が赤字であれば、返済のための原資が生み出されないことになりますし、経常利益率が0.1%というような低率の場合は、少しでも経営状態・経営環境が悪化すればすぐに赤字に転落してしまいます。
だからこそ、ビジネスローン審査では「収益性」も重要な審査項目になるのです。
- 売上高経常利益率
- 総資産経常利益率(ROA)
が主に「収益性」を判断する決算数値としてチェックされます。
経常利益が赤字であっても、そこに減価償却費が含まれる場合は、減価償却費は外して経常利益率を計算するのが一般的です。なぜなら、減価償却費は経費ではあるものの、すでに支払い済みの資産購入額を計上しているものですので、実際にお金が出ていかないからです。
「赤字であっても、ビジネスローンに申し込んでみてください。審査次第で融資できます。」
となっているビジネスローンというのは
「減価償却費部分を排除して黒字だったら融資できます。」
と言っているのです。減価償却費を除いても赤字の場合は、99%のビジネスローン会社は融資することができません。それでも貸してくれるという場合には闇金を疑う必要が出てきます。注意が必要です。
売上高経常利益率
売上高経常利益率とは?
売上高経常利益率の審査評価の目安
- 優良:4.0%~
- 良好:3.0%~4.0%
- 普通:0.0%~3.0%
- 注意:-0.3%~0.0%
- 危険:~-0.3%
総資産経常利益率(ROA)
総資産経常利益率(ROA)とは?
総資産経常利益率(ROA)の審査評価の目安
- 優良:15.0%~
- 良好:9.0%~15.0%
- 普通:6.0%~9.0%
- 注意:2.0%~6.0%
- 危険:~2.0%
2.「安全性」を判断する決算数値
ビジネスローンを融資したとしても、すぐに倒産されてしまえば、経営者の個人保証があるとはいえ、回収するのが困難になってしまいます。会社の倒産時に自己破産する経営者も少なくありませんから、「倒産する」ということは「貸し倒れになる」というのとほぼ同義になってしまうのです。
そうならないために「倒産しない安全性」のチェックとして
- 当座比率
- 流動比率
- 固定比率
- 固定長期適合率
- 自己資本比率
を見るのです。
多少の違いはあるものの、どれも自己資金や資産と負債のバランスをチェックする指標です。
- 負債に対して、資産が少なければ → 倒産の確率が高い
- 負債に対して、資産が多ければ → 倒産の確率が低い
ということになります。
当座比率
当座比率とは?
当座比率の審査評価の目安
- 優良:100%を超えている状態
流動比率
流動比率とは?
流動比率の審査評価の目安
- 優良:200%を超えている状態
固定比率
固定比率とは?
固定比率の審査評価の目安
- 優良:100%を下回っている状態
固定長期適合率
固定長期適合率とは・
固定長期適合率の審査評価の目安
- 優良:100%を下回っている状態
自己資本比率
自己資本比率とは?
自己資本比率の審査評価の目安
- 優良:40%を超えている状態
3.「返済能力」を判断する決算数値
ビジネスローンを提供している金融機関にとってみれば
「回収できるか?否か?」
「完済してくれるか?どうか?」
がすべてだからです。
当然、「収益性を見る決算数値」も、「安全性を見る決算数値」も、返済してくれるのかどうか?をチェックするために見ているのですが、より直接的に返済能力を判断できるのが
- 債務償還年数
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
なのです。
債務償還年数
債務償還年数とは?
債務償還年数の審査評価の目安
- 優良:3年以内
- 良好:5年以内
- 普通:10年以内
- 注意:10年超
- 危険:20年超
インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオとは?
インタレスト・カバレッジ・レシオの審査評価の目安
- 優良:20倍~
- 良好:10倍~20倍
- 普通:2倍~10倍
- 注意:1倍~2倍
- 危険:~1倍
まとめ
ビジネスローンの決算数値の審査では
- 「収益性」
- 「安全性」
- 「返済能力」
の3つのポイントを中心に総合点が付けられます。
「どの決算数値を重視するのか?」は金融機関ごとに異なります。それ自体が審査ノウハウなのです。
とはいえ、大きく変わるものではありませんので、ビジネスローン審査に通すためには
上記の決算数値を目安の「良好」「優良」に持っていくこと
が重要になってきます。決算数値は、今日の明日で修正できるものではありません。1年間の会社経営の結果ですから、日ごろの会社経営から上記の数値を意識して経営することが重要なのです。
審査基準その2.事業歴
ビジネスローン審査では「決算数値」が重要であることは前述した通りです。
当然、「決算数値」は「決算」が終わってはじめて「決算書」として確定されるものです。
そのため、ビジネスローン審査の前提となる「決算数値」が出ていないと融資はできないのです。
●法人のお客様
代表者ご本人を確認する書類、登記事項証明書(商業登記簿謄本)、決算書原則2期分 等
●個人事業主のお客様
ご本人を確認する書類、確定申告書原則2年分 等
という記載のあるビジネスローンの場合
少なくとも2期分の決算書が必要になるのですから
事業歴が2年以上経過していないと申込ができない
ということを意味しています。
決算期が終わって2カ月以内に法人税の申告をしなければならないため、決算書は決算期が終わって2カ月以内に作成するものです。
つまり、2年と1カ月~2カ月が経過して、はじめてビジネスローン審査に申し込むことができるのです。ただし、「原則2期分」となっています。「原則」ですので1期分でも、申込自体はできます。
とはいえ、
- 事業歴が2期を経過していること → 確実性の高い決算数値がわかる最低ライン
と考えておく必要があります。
- 事業歴が1期を経過しただけ → 申込できるビジネスローンはあるが審査にはマイナス評価になる
ということになります。
審査基準その3.経営者個人の信用情報
ビジネスローンでは、通常の銀行融資と同じように
経営者個人の連帯保証
が必須となります。
これは、どのビジネスローンでも同じです。
法人の場合は、倒産リスクが高いため、金融機関は貸し倒れリスクを回避するために、経営者(代表者)個人を連帯保証人として、会社が倒産した場合に残った借金は経営者(代表者)個人に請求するのです。
経営者(代表者)個人の信用力を見るために個人信用情報をチェックするのです。
個人信用情報とは?
を言います。
- 氏名
- 住所
- ローンサービスへの申込履歴
- ローンサービスの利用状況(借入件数、借入額、借入ローン商品の種類)
- 直近2年間の返済状況(返済遅延の有無など直近24か月分が掲載される)
- 返済事故の有無(債務整理や自己破産、61日以上の返済遅延など)
などが個人信用情報には記載されています。
法人の決算数値(経営状況)がビジネスローン審査の基準をクリアしていたとしても
- 経営者個人が多額の借金を追っている
- 経営者個人が返済事故を起こしている
- 経営者個人が返済遅延を繰り返している
・・・
などの問題があるのであれば
ということになります。
審査基準その4.税金の納付状況
会社経営をしている以上は、必ず税金の納付が必要になります。
- 法人税
- 法人住民税
- 消費税
- 固定資産税
・・・
様々な税金負担があるのです。
ビジネスローン審査では
「税金の未納がないかどうか?」
をチェックされます。
なぜ「税金の納付状況がビジネスローン審査で重要なのか?」というと
の方が優先だからです。
ビジネスローンを融資したとして、企業が倒産したときに残った財産を債権者に返済するのですが、まず税金を支払って、残りを債権者で分け合うスタイルなのです。
そのため、ビジネスローン会社は税金未納があると、倒産時の回収が不利になってしまうのです。
当然、それだけの理由ではなく
ということの証左でもあるからです。
税金は、確実に回収できる分、多少の遅延では取り立てがありません。そのため、資金繰りが困難になった会社が、まず手を付けるのが「税金の支払いを遅らせる」という行為です。
そのため、「資金繰りが苦しいサインが税金未納である」とも言えるのです。
審査基準その5.書類の間違え、提出までの期間
前述した審査基準よりは重要度は落ちますが・・・
それでも審査ではじかれてしまうのが書類関連のミスです。
- 申込書(申込フォーム)
- 提出書類(必要書類)
に
- 記載のミス
- 数字のミス
がある場合には、信頼性は著しく落ちてしまいます。
例えば
- 決算書に記載されている営業利益
と
- 申込書に記載した営業利益
が異なる場合、虚偽の申請をしているということになってしまいます。
「虚偽の申請」というのは、「ウソ」ということです。
ウソをつく人が信用されないのは、ビジネスローン審査でも同じなのです。
また、ウェブ申込などをしてから、申込書類や必要書類の提出に時間がかかりすぎてしまう方も、審査にはマイナスの評価です。
申込から、書類提出までに数週間から1カ月以上の時間がかかると、「本気度が薄い」と判断されてしまうのです。これも審査にはマイナス評価です。
審査基準その6.会社概要、免許、業種
最後に、それほど重要ではありませんが
- 会社概要
- 免許
- 業種
なども、考慮されます。
ビジネスローン審査では、スコアリングシステムでの審査が主流になってきています。
スコアリングシステムでは、同じ条件の過去の企業の貸し倒れデータから、貸し倒れ率を算出し、該当企業の予想貸し倒れ率を予想して、審査結果を自動的に判定するシステムですので
業種によって
- 倒産しやすい業種
- 倒産しにくい業種
もあるのです。
業種によって、貸し倒れ率が異なるのであれば、審査の通りやすさも業種で変わってくるのです。
- 新規参入が多いインターネット関連企業
- 競合や入れ替わりの多い飲食店
などは、貸し倒れ率が高い業種として、審査は厳しくなってしまいます。
審査基準その7.経営者の印象
基本的には、ビジネスローンでは
- スコアリングシステムによる自動審査を採用しているビジネスローン会社 → 面談審査なし(銀行、大手消費者金融)
- アナログによる審査を採用しているビジネスローン会社 → 面談審査あり(中小規模の消費者金融)
に大別されるのですが
アナログ審査のビジネスローン会社の場合は、面談審査があるところが少なくありません。
面談では、決算書や経営状況のヒアリングなどが行われますが・・・
- 経営者の受け答え(質問に対して的確に回答できるか?)
- 経営者の身なり(誠実さを表現できる身なりをしているか?)
- 経営者の姿勢(姿勢正しく座れているか?)
- 時間に遅刻しない
など、社会人として当然の立ち振る舞いができているかどうかが、審査担当者の印象を大きく左右するのです。
まとめ
ビジネスローンの審査基準には
- 審査基準その1.決算数値
- 審査基準その2.事業歴
- 審査基準その3.経営者個人の信用情報
- 審査基準その4.税金の納付状況
- 審査基準その5.書類の間違え、提出までの期間
- 審査基準その6.会社概要、免許、業種
- 審査基準その7.経営者の印象
があります。
重要度が高いのは、言うまでもなく「決算数値」です。
決算数値の審査では
- 「収益性」
- 「安全性」
- 「返済能力」
の3つのポイントで審査が行われます。
決算の数字というのは、1年間の会社の経営結果ですから、今日の明日で変えられるものではありません。
しかしながら、これらの指標というのは、ビジネスローンの審査だけでなく、銀行融資の審査でも、同じ内容がチェックされるものですので、日常の会社経営の中で、常に意識しておくべき指標なのです。
上記の審査基準を理解したうえで、ビジネスローンの審査に挑みましょう。
また、上記の審査基準の評価を、今日、明日という短期間で、大幅に改善することは、ほぼ不可能です。長年の積み重ねが評価されるからです。
上記の審査基準に気を配っても、ビジネスローン審査に通らない方は、審査甘いビジネスローンに申し込むことをおすすめします。
「ビジネスローン審査に通るためには何を気を付ければ良いの?」
・・・