「ビジネスローン審査が甘いのか?厳しいのか?」今回は、ビジネスローンは銀行融資や公的融資と比較して本当に審査が甘いのか?について解説します。
大きく分けた借り入れによる資金調達方法の分類
中小企業が利用できる「借入」による資金調達方法には、大きく分類すると
- 公的融資:日本政策金融公庫
- 公的融資:制度融資
- 銀行融資:信用保証協会の保証付き融資
- 銀行融資:プロパー融資
- ビジネスローン:銀行ビジネスローン
- ビジネスローン:ノンバンクビジネスローン
と、6種類で分けることができます。
一つずつ簡単にメリットデメリットを開設します。
公的融資:日本政策金融公庫
簡単に言えば
民間の金融機関が貸し倒れリスクを恐れて融資できない
- 創業資金
- 中小企業、零細企業、小規模企業の長期資金
を、融資することで、経済活動を活性化させることを目的の一つとしています。
普通貸付でも
- 融資限度額:4,800万円
- 返済期間:最長10年
- 利率:1.0%~2.0%台
と、低金利で十分な金額の借り入れが可能になっています。
メリット
- 民間の金融機関と比較して審査が甘い
- 高額な借り入れが可能
- 通常は借入ができない創業資金などの借入も可能
- 個人保証なしのプランもある
デメリット
- 利用できる枠が決まっている
- 申込から融資までには1カ月以上かかる
- 自己資金が必要
「ビジネスローン」との「審査の甘さ」比較
「日本政策金融公庫」は、「ビジネスローン」と比較しても、審査は甘い資金調達方法となります。
なぜなら、「ビジネスローン」は民間の金融機関が提供しているローンサービスであり、収益性が重視されます。しかし、「日本政策金融公庫」は、政府系金融機関であり、収益性よりも、日本経済を活性化させることに重きを置いています。
そのため、通常は、起業資金などは「ビジネスローン」では借りることはできませんが、「日本政策金融公庫」では貸し倒れリスクが高い起業資金の借入もできるのです。
しかしながら、「日本政策金融公庫」にもデメリットがあります。それは「自己資金が必要になる」ということです。
概ね事業全体にかかる費用の10分の1は自己負担をしていないと、借りられないケースが多いのです。
なぜ、そのような仕組みになっているかというと、「日本政策金融公庫」には経営者の個人保証がないプランもあるので、自己資金0円で借りることができてしまうと、完全に「人のお金で無責任にビジネスができる」状態になってしまうのです。
これを回避するために、「日本政策金融公庫」では、自分も責任を負うという意味で、事業全体にかかる費用の3分の1の自己資金を用意することが、暗黙の了解となっているのです。
自己資金ゼロ円でも借りることができる「ビジネスローン」とはこの部分で違いがあるのです。
公的融資:制度融資
地方公共団体は、地元の企業の業績を伸ばして税収を増やすことも重要な政策になります。しかし、融資をする機能はないので、地元の金融機関と連携し、金融機関のリスクは信用保証協会が吸収する形で、融資を行っているのです。
メリット
- 民間の金融機関と比較して審査が甘い
- 高額な借り入れが可能
- 通常は借入ができない創業資金などの借入も可能
デメリット
- 自治体によって制度が異なる
- 利用できる枠が決まっている
- 申込から融資までには1カ月以上かかる
「ビジネスローン」との「審査の甘さ」比較
「制度融資」の大きなポイントは、実際に貸すのは「民間の金融機関」ですが、地方公共団体が「信用保証協会の20%の被カバー分」を保証してくれて、地方公共団体の予算で金融機関へ支払う「金利の上乗せ」もしてくれるのです。
つまり、「民間の金融機関」にとっては、ほぼノーリスクで融資ができることを意味しています。
ここだけ見ると、審査が甘いのは「ビジネスローン」よりも「制度融資」と言えます。
しかし、「制度融資」に大きなデメリットがあります。
3社が連携して動く融資制度のため、
- 地方公共団体に斡旋してもらう
- 信用保証協会の審査がある
- 金融機関の審査がある
という形で、融資までにかなりの時間を要してしまうのです。
さらに、地方公共団体によって「制度融資」の内容が異なり、「制度融資」を採用していない地方自治体もあるのです。
融資までのスピードという意味では、即日融資が可能な「ビジネスローン」に大きく劣ってしまうのです。
銀行融資:信用保証協会の保証付き融資
つまり、中小企業が民間の金融機関から融資を受けて、返済できなかった場合に中小企業に代わって「代位弁済」をしてくれるのです。その代わりに中小企業は、信用保証協会に「保証料」を支払う仕組みとなっています。
信用保証協会は株式会社日本政策金融公庫との間で再保険契約(中小企業信用保険)を結んでいるため、信用保証協会自体はリスクをほとんど負わず、結局は政府系金融機関の「日本政策金融公庫」が貸し倒れリスクを負っているのです。
メリット
- 銀行プロパー融資よりは審査が甘い
デメリット
- 保証料が発生する
- 信用保証協会の審査と金融機関の審査が必要になる
「ビジネスローン」との「審査の甘さ」比較
以前までは、信用保証協会が100%のリスクを負っていたので、銀行は積極的に「信用保証協会の保証付き融資」を推し進めていました。しかし、貸し倒れが多く発生したことで、信用保証協会も100%のリスクを負うのではなく、20%は銀行・金融機関が貸し倒れリスクを負ってくれ、という形に切り替えました。
結果として、金融機関も20%分の貸し倒れリスクがあるので、以前よりも真剣に審査をしなければならない状態になってしまったのです。
厳密には比較できませんが「信用保証協会の保証付き融資」と「ビジネスローン」を比較すれば、金利が高い分金融機関の許容できる貸し倒れ率が高い「ビジネスローン」の方が審査が甘い可能性が高いのです。
ビジネスローン:銀行ビジネスローン
元々、ビジネスローンというのは、銀行が開発したローン商品です。
銀行融資の場合は、融資担当者がついて、対象の企業や業界の調査をして、稟議書を起案し、支店内の上司が回覧して、支店長が決裁して、融資に至るものです。
融資には、それなりの人員をかけているわけですから、数百万単位の小規模な融資案件というのは、誰もやりたがならないのです。1件の融資に対するコストが同じであれば、融資額の大きい中堅企業、大企業への融資を重視するのは当然なのです。
しかし、日本の企業の99.7%は中小企業・零細企業です。銀行としても、「その市場を取りに行きたい。」という思惑があり
- 金利を高く設定する(中小企業・零細企業の貸し倒れリスクを考慮)
- 決算書を元にスコアリングシステムで自動審査をする
形で、中小企業・零細企業には審査コストをかけずに融資をする仕組みとして「ビジネスローン」を開発したのです。
しかし、実際はやってみると、スコアリングシステムで想定した貸し倒れ率以上の貸し倒れが発生してしまい、銀行としては「ビジネスローン」の提供から、撤退傾向にあるのです。(※近年は、地方銀行やネット銀行を中心にビジネスローンが再度注目され、サービス化されはじめています。)
メリット
- ノンバンクのビジネスローンよりは低金利
デメリット
- ノンバンクのビジネスローンよりは融資までに時間がかかる
- ノンバンクのビジネスローンよりは審査が厳しい
- 銀行はビジネスローンを積極的に販売していない
「ノンバンクのビジネスローン」との「審査の甘さ」比較
銀行ビジネスローンでは、スコアリングシステムを導入し、自動的に決算書の数値を読み取って、融資可否を判断しています。しかし、実際に融資をしてみると、スコアリングシステムで算出した貸し倒れ率以上に貸し倒れが発生してしまって、ビジネスローンの提供から撤退傾向にあるのです。
積極的に販売していないのですが、当然ビジネスローンの審査は厳しくなってしまいます。
ノンバンクのビジネスローンと比較すると、銀行ビジネスローンは審査が厳しいと考えた方が良いでしょう。
ビジネスローン:ノンバンクビジネスローン
銀行がビジネスローンの提供から撤退したタイミングで、大手消費者金融が積極的にビジネスローンの提供を始めました。
大手消費者金融は「カードローンの仕組み」をそのまま、「ローンカード型のビジネスローン」に転用できるので
- 最短60分審査
- 最短即日融資
- ローンカード
- コンビニATMで24時間365日借入可能
- 残高リボルビング払い
・・・
と、利便性の高いビジネスローンを提供しているのです。
その分
- 金利が高い
という特徴があります。
メリット
- 融資スピードが早い
- コンビニATMで24時間365日借入可能
- 銀行ビジネスローンよりは審査が甘い
デメリット
- 金利が高い
「銀行ビジネスローン」との「審査の甘さ」比較
銀行ビジネスローンよりも、金利は高く設定されています。大手消費者金融のビジネスローンは、銀行ビジネスローンと同じスコアリングシステムの自動審査を採用していますが、金利が高い分、中小企業・零細企業の貸し倒れ率も許容できているのです。
当然、「金利が高い=許容できる貸し倒れ率が高い」ということになるので、ノンバンクのビジネスローンは、銀行ビジネスローンより審査が甘いことになります。
結局、ビジネスローンの審査は本当に甘いのか?
銀行融資と比較すると、ビジネスローンの審査は甘い!
銀行も、ノンバンクも、民間企業ですので「ビジネスの仕組み」の中でローンサービスを提供しています。
金利が低い = 許容できる貸し倒れ率が低い = 審査が厳しい
という関係にあります。
ノンバンクのビジネスローンは、ほとんど利息制限法の上限金利が適用されます。
利息制限法
- 元本が100,000円未満の場合:年2割(20%)
- 元本が100,000円以上1,000,000円未満の場合:年1割8分(18%)
- 元本が1,000,000円以上の場合:年1割5分(15%)
ビジネスローンの場合は、100万円以上の融資が多いので上限金利は「15.0%」の設定が多いのです。
公的融資と比較すると、ビジネスローンの審査は甘くない!?
ビジネスローンの審査は、スコアリングシステムによる自動審査が採用されています。
スコアリングシステムによる審査というのは、決算書の数値を入力して、審査結果が自動的に算出されるシステムになっています。アナログ審査をする事業者金融もありますが、同じように決算書の数値をもとに審査をするのです。
そのため、どのビジネスローンでも
最低2期分の決算書の提出
が必須になっているのです。
1期分だと経営状況を正確に判断できないので、2期分の決算書が必要になるのです。
しかし、ビジネスが根底にあるわけではない、公的な金融機関による融資である「日本政策金融公庫の融資制度」「制度融資」の場合は
- 決算書のない創業資金
- 決算書のない1期目
- 1期分しか決算書のない2期目
でも、融資を受けられる可能性が高いのです。
このことから、考えると
と考えて良いでしょう。
しかし、公的融資は
- 一定額以上の自己資金がないと借りられない
- 融資が実行されるまでに1カ月以上の時間がかかる
- 借りられる枠に上限がある
というデメリットもあるのです。
- 資金が必要なタイミングで時間がない方
- すでに公的融資の枠がいっぱいの方
- 自己資金がない方
等は、公的融資ではなく、ビジネスローンを選ぶのです。
まとめ
資金調達方法には
- 公的融資:日本政策金融公庫
- 公的融資:制度融資
- 銀行融資:信用保証協会の保証付き融資
- 銀行融資:プロパー融資
- ビジネスローン:銀行ビジネスローン
- ビジネスローン:ノンバンクビジネスローン
と、6種類で分けることができます。
銀行融資とビジネスローンを比較すると
どちらも、ビジネスがベースになるので
- 金利が高い = 許容できる貸し倒れ率が高い = 審査が甘い
- 金利が低い = 許容できる貸し倒れ率が低い = 審査が厳しい
という形になり、金利が高い「ビジネスローン:ノンバンクビジネスローン」が一番審査が甘いということになります。
「審査が甘さ」を重視するのであれば、ノンバンクのビジネスローンをおすすめします。
公的融資とビジネスローンを比較すると
公的融資を提供している政府系金融機関は、ビジネスをベースにしているわけではなく、「経済の活性化」を目指す政府の意向に即した融資制度となります。
そのため
- 公的融資 = 決算書がなくても融資が受けられる
- ビジネスローン = 2期分の決算書が必要
という違いがあります。
そのため、決算書がない状態であれば、ビジネスローンよりも公的融資の方が審査が甘いと言えます。
ただし、公的融資には
- 一定額以上の自己資金がないと借りられない
- 融資が実行されるまでに1カ月以上の時間がかかる
- 借りられる枠に上限がある
というデメリットもあるので、自社の資金繰りの状況を踏まえて、「公的融資」や「ビジネスローン」を使い分けるべきです。「銀行融資」は低金利ですので、金利の低さを重視するなら「銀行融資」を選びましょう。
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