商工中金はもう政府系ではない|2025年6月12日に政府保有株式が全部売却、翌13日に改正法が施行。融資の対象は株主である組合とその組合員

商工中金の政府保有株式の処分を示すアイキャッチ。2023年6月の改正法案成立、2024年7月からの一般競争入札、2025年6月12日の自己株式取得、2025年6月13日の改正法施行という4点の年表と、資本金2,186億円・貸出金9兆7,435億円・店舗数国内103海外5・社員数3,389人・会社成立1936年10月8日の数値を並べている

商工中金を「政府系金融機関」として紹介する解説は、いまも多く残っています。ところが2025年6月12日に政府保有株式が全部売却され、翌13日に商工中金法の改正法が施行されました。政府が株主として残っている前提で書かれた説明は、この時点で成り立たなくなっています。

2026年10月13日に商工中金の公式ページで確認したこと

2023年6月に株式会社商工組合中央金庫法の改正法案が成立し、政府保有株式の全部処分と、業務範囲の一部を銀行と同様にする見直しが決まりました。特別準備金制度・危機対応準備金制度などの措置は維持されています。

政府保有株式の一般競争入札は2024年7月、2025年1月、2025年4月に実施され、商工中金自身が第2回・第3回に参加して第3回で落札しました。2025年6月12日に自己株式として取得し、政府保有株式は全部売却されました。

会社概要(2026年3月31日現在)は、資本金2,186億円、預金6兆7,928億円、貸出金9兆7,435億円、店舗数は国内103・海外5、社員数3,389人です。中小企業組合や中小企業者の金融の円滑化という法目的は変わらないと明記されています。

この記事の訂正:以前の本文は「出資しているのは財務省(政府)が約半分、残りは組合が半分で、政府と組合が出資する唯一の政府系金融機関」と書いていました。2025年6月12日に政府保有株式が全部売却されたため、この説明は現在の姿と合いません。

あわせて、2023年1月時点として載せていた預金・貸出金・店舗数・社員数・格付も、2026年3月31日現在および2026年6月30日現在の公表値へ置き換えました。

政府保有株式がなくなるまでの流れ

法改正から株式の処分完了までは2年かかっています。公式ページに書かれている順に並べると、次のようになります。

商工中金法の改正と政府保有株式の処分(公式ページの記載順)

2023年6月

株式会社商工組合中央金庫法の改正法案が成立。政府保有株式の全部処分と、業務範囲の一部を銀行と同様に見直すことが決まった

2023年7月

商工中金法施行令の改正により株主資格が拡大された

2023年9月

財務省で財政制度等審議会国有財産分科会が開かれ、政府保有株式の処分に関する答申が決定・公表された

2024年7月

政府保有株式の一般競争入札(第1回)が実施された

2025年1月

第2回の一般競争入札。商工中金自身も参加した

2025年4月

第3回の一般競争入札。商工中金が落札した

2025年6月12日

政府保有株式を自己株式として取得。政府保有株式が全部売却された

2025年6月13日

商工中金法の改正法が施行された

商工中金の「商工中金法の改正・政府保有株式の自己株式取得」のページ。2023年6月に改正法案が成立したこと、政府保有株式の全部処分と業務範囲の一部を銀行と同様に見直すこと、特別準備金制度・危機対応準備金制度等は維持すること、2025年6月12日に政府保有株式を自己株式取得して全部売却され、2025年6月13日に改正法が施行されたことが書かれている
出典:商工中金「商工中金法の改正・政府保有株式の自己株式取得」(2026年10月13日に表示されていた内容)

注意したいのは、処分されたのは株式であって、商工中金の役割ではないという点です。公式ページには「商工中金の使命(中小企業組合や中小企業者の金融の円滑化という法目的)は、今後も変わることはありません」と書かれています。特別準備金制度・危機対応準備金制度といった仕組みも維持されます。

会社概要の数字は3年で大きく動いた

公表されている会社概要を、以前この記事が載せていた2023年1月時点の数字と並べます。預金は5兆820億円から6兆7,928億円へ、貸出金は8兆2,941億円から9兆7,435億円へ増えています。一方で社員数は3,810人から3,389人へ減りました。

商工中金の規模(旧記述の2023年1月時点と、公式の2026年3月31日現在)
項目 旧記述(2023年1月時点) 公式(2026年3月31日現在)
資本金 2,186億円(内政府保有株式1,016億円) 2,186億円(政府保有株式の記載なし)
預金 5兆820億円 6兆7,928億円
譲渡性預金 2,738億円 326億円
債券 3兆9,901億円 3兆1,287億円
貸出金 8兆2,941億円 9兆7,435億円
店舗数 国内100/海外4 国内103/海外5
社員数 3,810人 3,389人
代表者 記載なし 代表取締役社長 グループCEO 関根正裕

譲渡性預金が2,738億円から326億円へ、債券が3兆9,901億円から3兆1,287億円へ減っている一方、預金が1兆7,000億円以上増えています。資金の取り方が市場性の調達から預金へ寄っている形です。会社成立は1936年10月8日、本店は東京都中央区八重洲二丁目で変わりません。

商工中金の会社概要ページ。2026年3月31日現在として、名称は株式会社商工組合中央金庫、会社成立は1936年10月8日、資本金2,186億円、預金6兆7,928億円、譲渡性預金326億円、債券3兆1,287億円、貸出金9兆7,435億円、店舗数は国内103海外5、社員数3,389人と表示されている
出典:商工中金「会社概要」(2026年10月13日に表示されていた内容。数値は2026年3月31日現在)

格付も3社とも動いている

格付情報(2026年6月30日現在)も、以前の記述とは変わっています。ムーディーズの長期預金はA1からA2へ、日本格付研究所の長期発行体格付はAA+からAAへ下がりました。格付投資情報センターの発行体格付はAA-で変わりませんが、格付の方向性は「ネガティブ」です。

商工中金の格付(旧記述と、公式の2026年6月30日現在)
格付会社 種類 旧記述 2026年6月30日現在
ムーディーズ 長期預金 A1 A2(見通し:安定的)
ムーディーズ 短期預金 P-1 P-1
格付投資情報センター(R&I) 発行体格付 AA- AA-(方向性:ネガティブ)
日本格付研究所(JCR) 長期発行体格付 AA+ AA(見通し:安定的)

格付は債務の償還力を第三者が記号で表したものです。3社のうち2社で記号が1段階下がり、R&Iは記号を据え置いたまま方向性をネガティブとしています。借り手の立場で直接どうなるという話ではありませんが、資金調達のコストに関わる指標なので、商工中金の条件を他の金融機関と比べるときの背景にはなります。

融資を受けられるのは「株主である組合とその組合員など」

商工中金の融資には、銀行にはない入り口の条件があります。公式ページの「融資の対象となる方」には、商工中金の株主である中小企業の組合とその組合員などが対象だと書かれています。誰でも口座を作って借りられるという形ではありません。

この株主資格については、2023年7月に商工中金法施行令の改正によって拡大されたことが公式ページに記載されています。法改正の一環で、対象になる範囲そのものが広がったということです。自社が当てはまるかどうかは、所属している組合があるか、どの組合が商工中金の株主かによって決まります。

公式ページが挙げている融資の種類

一般的な融資

設備資金や長期運転資金をはじめ、手形割引などの短期運転資金まで幅広く扱う

国・地方公共団体の施策に基づく対応

国の施策に基づく各種の貸付制度を取り扱う。地方公共団体の融資制度も扱う

組織化・組合共同事業支援

老朽代替や再整備のニーズを持つ団地組合、財務改善や新事業進出のニーズを持つ組合員を支援する

業界団体の制度融資

トラック・通運・バス近代化基金融資、自動車整備業エコ・ローンなど

さまざまな金融手法

シンジケートローン、ABL(アセット・ベースト・レンディング)、売掛債権流動化

経営者保証への対応

「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨を踏まえた適切な対応に努めると明記している

店舗は全都道府県にあります。公式ページは「全都道府県に店舗を構えています。ご相談は、お近くの商工中金の各窓口まで」と案内しており、会社概要の店舗数は国内103・海外5です。民間のビジネスローンのようにウェブで申し込みが完結する作りではなく、窓口での相談が入り口になります。

民間のビジネスローンと比べて見るところ

商工中金の融資と、ノンバンク系のビジネスローンは、同じ「事業資金の借入」でも性格が違います。商工中金は株主である組合の組合員などに対象が限られる代わりに、設備資金や長期運転資金といった期間の長い資金を扱います。一方、ノンバンク系のビジネスローンは対象が広く、申し込みから実行までが速い代わりに金利の幅が上に伸びます。

中小企業等協同組合その他主として中小規模の事業者を構成員とする団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図るために必要な業務を営むことを目的とする。

商工中金「会社概要」の「目的」欄より引用(2026年10月13日取得)

この目的の条文は、株式の処分が終わったあとも変わっていません。株主の構成が変わっても、法目的として中小企業向けの金融が据えられている点が、商工中金を他の民間金融機関と分けている部分です。

借入条件を比べる前提として、資金使途の考え方は設備資金と運転資金の違いに、保証を使う場合の料率は信用保証協会の保証料率の記事にまとめています。

よくある質問

商工中金について公式ページで確認できること
質問 公式ページに書かれていること
商工中金はいまも政府系金融機関ですか 2025年6月12日に政府保有株式が全部売却され、2025年6月13日に改正法が施行されました。政府が株主として残っている状態ではありません
役割は変わりましたか 「商工中金の使命(中小企業組合や中小企業者の金融の円滑化という法目的)は、今後も変わることはありません」と明記されています
業務範囲はどうなりましたか 法改正で業務範囲の一部を銀行と同様となるよう見直す一方、特別準備金制度・危機対応準備金制度等の措置は維持するとされています
誰でも借りられますか 融資の対象は、商工中金の株主である中小企業の組合とその組合員の皆さまなどです
株主資格は広がったのですか 2023年7月に商工中金法施行令の改正による株主資格の拡大が公表されています
店舗はどこにありますか 全都道府県に店舗があると案内されています。会社概要の店舗数は国内103・海外5です
経営者保証はどう扱われますか 「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨を踏まえた適切な対応に努めると書かれています

まとめ

商工中金を調べるときにまず押さえるのは、2025年6月12日に政府保有株式が全部売却され、翌13日に改正法が施行されたという事実です。2023年6月の法改正で決まった全部処分が、2年かけて完了しました。「政府が約半分を出資している」と書かれた解説は、この日より前の姿を説明しています。

規模は2026年3月31日現在で、資本金2,186億円、預金6兆7,928億円、貸出金9兆7,435億円、店舗数は国内103・海外5、社員数3,389人です。格付は2026年6月30日現在でムーディーズA2、R&I AA-、JCR AAとなっており、3社のうち2社で記号が以前より1段階下がっています。

融資の入り口は、株主である中小企業の組合とその組合員などに限られます。この条件は株式の処分後も残っており、法目的である「中小企業組合や中小企業者の金融の円滑化」も変わりません。民間のビジネスローンと並べるときは、対象の広さ・資金の期間・窓口の形がそれぞれ違うという前提で比べることになります。

出典:商工中金「商工中金法の改正・政府保有株式の自己株式取得」https://www.shokochukin.co.jp/about/company/amend/、「会社概要」https://www.shokochukin.co.jp/about/company/profile/、「中小企業向け融資」https://www.shokochukin.co.jp/corporation/service/raise/target/(いずれも2026年10月13日取得)

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